家に帰ると、矢野絢子の 2nd フルアルバム『窓の日』が Amazon から届いていたので、 早速聴いてみました。
これはまた…、いやはや、一筋縄でいかないものを出してきましたね。 何となく「これでもまだ君たちはついてこれるかな?」と言われているような気もする、 挑戦的なアルバムです。
このアルバムのほとんどは、 高知にある彼女自身のライブハウス「歌小屋の2階」で、 仲間たちと録音したもので、 そのためか一流の機材の使える東京のスタジオで撮った作品とは、 録音のクオリティが明らかに違います。
しかし一発撮りに近い収録がされたこのアルバムのトラックたちは、 何とも手作り感やアナログ感に溢れていて、 まるで非常によくできたライブアルバムであるかのような存在になっています。 楽器もほとんどがピアノ、ブルースハープ、ヴァイオリンというシンプルな構成で、 まさに彼女の音楽の原点に戻った構成と言えるのではないでしょうか?
逆に言うとそういうのがダメな人には受け入れられないアルバムも知れず、 これがメジャーレーベルで成立していること自体が不思議な感さえもあります。 正直、自分が 10 年前だったらダメだった気もしなくはありません…。
矢野絢子というアーティストは、 前も言った気もするけれども、 決して歌が上手いタイプのアーティストではないと思いますが (ピアノは確かに物凄く上手いですけど…)、 歌に感情や物語をのせていく力には、有無を言わせないものがあります。
デビューアルバム『ナイルの一滴』では、 12 分の大作『ニーナ』に何度泣かされたことかわかりませんが、 今回は『ふたつのプレゼント』が…とにかく物凄い歌詞です。 クリスマスが誕生日の彼女の、クリスマスソング兼バースデイソングなのですが…。
どこまで本当の話かわからないですが、「ふたつのプレゼント」では、 複雑で悲惨で、それでも幸せだった子供時代、 そして複雑な父への想いが、とても明るいメロディにのって歌われています。 この曲を聴いて、 同じ高知出身の西原理恵子の傑作「ぼくんち」を思い出しました。 この曲を聴いた時の涙は、 たぶん「ぼくんち」を読んだときと同じ種類の涙なんじゃないかな、と思います。 なんか、理屈じゃとうてい言いあらわせない感情が歌われていているっていうのかな?
そして『吉野桜』…。ライブで聴いたときもとてもよい曲だと思いましたが、 このアルバムで配置された場所で聴くと、本当に…素晴らしいね。 そして歌小屋衆参加の『明るい方へ』、なんか最近気が付くと口ずさんでいます。 『一人の歌』を聴くと、去年の品川での「まいったか!」を思い出します(笑)。 その通り、今回も参りました。
なんかこういうことを書くのは反則だとは思うけれども、 やっぱりこのアルバムが理解できないという人はいると思うし、 そういう点はいかんともしがたいと思います。 これは、そういうエッジに乗って辛うじて成立している感じのアルバムです。 でも私にとってはとても素敵な音楽たちで、 聴けば聴くほど味が出てくるように思います。
いつか必ず、この人の歌を高知で聴いてみたいと思いました。 このアルバムが生まれた場所で、これらの曲を聴いてみたいなぁ…。 ともあれ、素晴らしい作品をありがとう。私にとって、今年のベスト 1 アルバムです。 もうこの位置はまず動かないでしょう。
去年の 10 月の品川、素晴らしいライブで出会えて光栄でした。 今度の 11 月のライブも、楽しみにしています。
11 月矢野絢子ライブレポ: 11/12 @ AOYAMA 月見ル君想フ、11/13 @ AOYAMA 月見ル君想フ、11/29 @ 高知・歌小屋の2階、11/30 @ 高知・歌小屋の2階(2006/01/05 追記)