2005 年 11 月 29 日 (火) 高知

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矢野絢子『窓の日』

(CD, 2005-10-12)


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矢野絢子『浅き夢』

(CD, 2005-04-13)


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矢野絢子『氷の世界』

(CD, 2005-01-19)


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矢野絢子『ライヴ「ナイルの一滴」 [DVD]』

(DVD, 2004-12-08)


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矢野絢子『ナイルの一滴』

(CD, 2004-10-13)


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矢野絢子『夕闇(初回)(DVD付)』

(CD, 2004-09-08)


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矢野絢子『てろてろ』

(CD, 2004-05-26)


ということで、結局駅から寄り道しつつも、 「歌小屋の2階」まで歩いてしまった。 意外に近くて、寄り道なしなら30分ちょいで着くだろう。 はりまや橋を越えてうしおえ橋を渡り、 あとは道の左に COCO'S が見えてくるまでまっすぐ歩く。 その十字路を左折 15m という感じだ。

別に歩かなくてもいいのだが、この街が生んだ音楽を聴く前に、 この街を自分の足で感じたいのだ。

歌小屋には開場10分前くらいについた。 「てろてろ」の中ジャケットや DVD で見たことのある緑の「UTAGOYA NO NIKAI」のネオンが緑に光っていた。

店の前には何人か人が集まっているが、 たぶん常連さんと他の歌小屋のミュージシャンの人々だろう。

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入口の前には本日の公演の札「矢野絢子」と「史香」が、 階段の上には、DVD で見たことのある「準備中」の札がかかっていた。

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ちょっと早かったのでメキシ小屋跡などを見て回った。 壁からは一昨日まで張ってあった池マサトさんたちのライブ告知ポスターもはがされ、 あれからたった2日しかたっていないのに、 本当に何があった場所なのかわからなくなっていた。

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開場時間になったので、歌小屋に戻った。 途中、なぜか現地の人っぽい女性に道を訊かれてしまったけれども、 「自由民権記念館はどっち?」との質問だったので、 昨日このあたりを放浪したので方向はわかった。 「旅行者なので、たぶん、になりますが、あちらですよ」と答える。 高知の街にちょっとだけいいことをしたのかもしれない (笑)。

歌小屋前にたむろしている人々に、階段の方を指して、 「初めて来たんですがこちらに行っていいんですか?」 と訊いてみると、とてもフレンドリーに「そうですよ、どうぞ」とのこと。 なんかいいところだ。

階段をのぼって右のドアを開けるとそこがライブハウス、歌小屋の2階だ。 通常は矢野絢子ライブは全て前売りだが、 県外在住の特例で電話で予約をしてある。ありがたい。 ここは受付もメンバー持ち回りでやっているらしい。

舞台には右端壁沿いにぴったり寄せられたアップライトピアノ。 たぶん、中央に寄せると床が抜ける危険性があるのでこう置いているのではないか、 …と勝手に推測する。 外は思ったより小綺麗で驚いたが、 中は適当な雑然さがあって不思議な空気を醸し出している。 でもまったく不潔な感じではなく、とても神経が行き届いた、 「コントロールされた雑然さ」だと思う。

周囲には今日の出演者関係のポスターなどが張られ、 舞台にもなぜか水墨画のようなピアノの絵がある。 独特の雰囲気を持つ空間だ。

無料サービスのコーヒーを飲みながら、のんびりと開演を待つ。 今日のプログラムは、
1. 矢野絢子「うたの四季2005『歌小屋』」→2. 史香「音沙汰2005」
の順だ。

ほぼ 19:30 のジャストオンタイムに開演。 アナウンスのあと、ベルが「チン」と鳴って、 矢野絢子ステージの開演を知らせる。 暗くなった歌小屋の中、 客席の間の狭いすき間を通って矢野絢子がステージに向かう。

一曲目は…「つめたい手」だ。 声とピアノが背筋に響く。ここは彼女のホームグラウンドなのだ。 素直に設定された控えめな音量のマイクから声がまっすぐに響く。 全身を抜けるような声だ。なぜだろう、目が潤んでくる。 一昨日にやっとツアー「窓の日」を終えて、 高知に帰ってきたばかりの彼女の声はややハスキー気味だが、 それはまったく関係ない。 この人の音楽はそういう細かいコンディションに影響されない。

アップライトピアノが右の壁面にぴったりついている配置は最初どうかと思ったけれども、 実は鍵盤の上の黒い板がきれいに反射して、意外にちゃんと表情が見える。 むしろ2面から表情が見えるようで面白い。 今日の衣装、黒いドレス風でとても素敵だ。

知らない曲を数曲交えながらライブは進行する。 「一人の歌」など『窓の日』収録の曲を聴くと、ツアーの記憶を思い出す。 今回のツアーでは、多くの歌小屋のメンバーがステージに出てくれて、 特に史香さんが東京以外の全ステージに出演ということで、 とても心強かったとのこと。 でもその東京しか見ていない私は、今日の史香さんステージもとても楽しみなのだ。 そう、史香さんをステージで見るのは去年の品川グローリアチャペル以来だ。

最初の方にやっていたアップテンポの曲もとてもよかったな…。 曲名はわからなかったけど。

ちょっとMC。ツアー中に、 開演前と終演後にモナカの3枚目のCD「郷」(きょう)が流れていたのだけれども、 高松と松山ではちゃんとした防音の楽屋がなかったのでそれが聞こえてきて、 自分の昔の曲にツッコミを入れつづけていたとのこと。 今では何時の間にかすっぽり抜けてしまったフレーズがあったりとか…。 そして「『郷』では大久保和花さんが歌っていた曲です」、 ということで「目を閉じないで」。

歌小屋仲間の板東さん誕生日おめでとう特別バージョンの、 「からんさ」改め今日だけ「裸眼さ」。 この建物、安普請のプレハブ造りっぽいだけに、 みんなが体でリズムを取る振動にとどまらず、 矢野さんが気合いを入れてペダルを踏む振動や、 もしかすると体重を込めて鍵盤を叩きつけるかすかな振動さえもが、 体に直接伝わってくる。 そこがまたいい。

私の隣に偶然座っている大久保和花さんの気合いのこもったリズム取りもいい。 そして歌小屋の仲間と客もみんな、 音楽を愛していることも伝わってくる。

曲順は自信がないけれども「小石」。 この「小石」とは一体何かについて、 今もはっきりとちょうどいい言葉がなくて悩んでいるとのMC。 ちょうど私は昨日桂浜で見たきれいな石たちを思い浮かべた。 石が石であるということは水があってぶつかって、 それで岩は小石になっていくのだ。 だからなんだと言われると私も困る。 微妙に(意図的に)外したツッコミが客席から入るのも楽しい。

ツッコミへの返答によると、 イメージは砂利よりは大きく親指と人差指を丸めた大きさ程度の川の石というから、 このあたりの このへんがイメージする小石に近いのかもしれない。 この写真は仁淀川の石だ。 『ナイルの一滴』のジャケット写真の場所なので、 なんとなく巡り合わせもいい。 とりあえず実際に一個小石を拾ってきてはとの提案もある。

このライブハウス、安普請の上に大通りに面しているので、 静かな曲だと外を通る車の音もかすかに聞こえる。 いかにも地方らしい DQN カーの排気音も、たまに前の道を通り過ぎる。 しかしそれさえもまたここの持ち味のようだ。

「ひとつふたつ」では対応するコードのブルースハープがないのか「ハーモニカ買ってなくて…まあ当分使わないし」とか謎のMC。 「窓の日」ツアーでは演奏していたのに、何故今日はないんだろう、 しかも何故当分使わないんだろう? とても不思議だが、まあ大人の事情がいろいろあるのだろう。

そしてやっとブルースハープを出してきて、 今まで聴いたことないような物凄いブレスで天に向かうように盛大に鳴らし…、 そして、みんなで参加しようが基本の、「明るい方へ」がスタート。 東京のライブでも楽しかったけど、ここでは更に楽しい。 矢野さん自身もものすごく楽しそうだ。 歌小屋の床も楽しく揺れ動く。

『僕はここで歌う人と/座って聴いている一人ずつの/背中を見て何度も泣いた/とてもとても美しいと思った』…。 「かなしみと呼ばれる人生の優しさよ」だ。 はじめてこの歌が生まれた場所で聴くことができた。 MCでは、「多くの歌をここで聴いて、 またどこかに歌いに行くような力が出てきたらいい」みたいなことを話していた。

どうも今月だか今年だかでメジャー契約が切れる上に本当に更新していない、 という噂は本当なのかなと思った。 この文章を書いているのはしばらく経ってからなので、 その真相は公式サイトに本人のメッセージとして書かれている。 この文章からにじみでる誠実さがいかにも彼女らしいと思う。

ラストは知らない曲。「子供たち」というタイトルだったと思う。 ラストにふさわしいとても素敵な曲だ。 ステージが終わると一礼して私の横を抜けて去っていく。 始めてのホームグラウンドでのライブ、本当に感動した。ありがとう。

10 分間の休憩の後に史香さんのヴァイオリンソロのステージ。 先ほど述べた通り、 以前見たことあるのは品川での矢野さんのサポートだったのだが、 今日は前半 1 人、後半は矢野絢子がサポートのピアノという構成。 一体ヴァイオリンのソロというのはどのようなステージなのだろう? と興味があったのだが、始まって納得。

矢野絢子の私的ジャンル分けはロックなんだけど、この人もそうだ。 最初に手回しオルゴールで一曲演奏したあと、ヴァイオリンを持つ。 そしてそのヴァイオリンを手足のように使って、 なんか噴出するものを吐き出しているような演奏。 すごい。でも MC は意外に可愛らしい。しかも愉快。 どれもはじめて聴く曲ばかりだけれども、とても素敵だ。

途中から矢野さんサポートで登場。 「めいめい」という曲があったので、何かと思うと子犬を飼いだしたとか。 その名も…紙を取り出し「命名 / 秋一(あきいち)」。客一同大爆笑。 「めいめい」って、「おのおの」の意味じゃなくて本当に「命名」だったのか。 それだけのために作った曲なのか? とりあえず、矢野家の「春吉」くんと仲良くあってほしい。

矢野絢子系の曲としては、まずは「手のひらに12月」。 これは東京以外では「窓の日」ツアーで史香サポートパート最初の曲としてやったらしい。 …そうか、それで「東京のみ」と宣言して始まった曲が何曲かあったんだな…。 アルバムとはだいぶ違ったアレンジで、 より史香さんパートの重みが増している感じの演奏だった。とてもよかった。

そして「移動遊園地」。 「移動遊園地」は複雑で不思議な曲。どうも新曲のようだ。これもとてもよい。

こちらも大満足。 その後これまたアナウンスで出演者を列挙して拍手。 こういうひとつのスタイルなのだろう。

「あさきゆめみし」のツアーでも行われた、相縁奇縁コーナー。 要するに抽選会なのだが、本日の景品は矢野絢子直筆のイラストと、 史香のオルゴール録音テープ。

このあとしばらく休憩を入れて 23:00 から第二部。 第一部に入場した人は無料で入れる。なんとも太っ腹。 でも一旦退場になるので、その後下でお茶でも飲みながら人々と雑談。 お客さんもいれば歌小屋のアーティストたちもいる。 人生初の高知県、いい場所だ。 寒いのでカップラーメンも売ってる。

区切りがいいのでここで翌日に続く。


『矢野絢子/史香 ライブ @ 歌小屋の2階 第2部』に続く。


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