このページを書くのがだいぶ遅れてしまいました。 一つは仕事が忙しすぎたせいでもありますが、 もう一つはこの日の出来事が、 時間がないときに書くにはあまりにも重すぎるものだったせいもあります。
実はこのページは沖縄で『風化風葬』を聴きながら書いています。
この日は Cocco のニューシングル 『羽根 〜 lay down my arms 〜』の発売日 (そして沖縄限定シングル・ライブビデオ『風化風葬』の発売日) だったのですが、 そのリリースの知らせは「Cocco 活動中止」という新聞の全面広告で伝えられました。 それによると Cocco は 4 月 18 日にリリースするアルバム『サングロース』と シングル『焼け野が原』をもって活動を「中止」するとのこと。 実は前日にこの噂は伝わっていたのですが、 最初は半信半疑で聞いていました。
ですが、本当に出てしまったこの発表。 「停止」でも「休止」でもない「中止」とは何?
なぜ?と思いながらも、 昨年の武道館のライブに行ったときに、 「まるでファイナルライブみたい」と思ったこと (書くと本当にそうなってしまいそうでその時は書けなかったのです)、 「SWITCH」に、いつもは演奏をしているうちに脱兎のように舞台を去ってしまう彼女が、 武道館では初めてバンドの演奏を最後まで舞台の袖で聞いていたと書いていたこと、 そして「この瞬間をとどめておこう、…これで生きていける」と書いていたこと、 いきなり沖縄限定のシングルを出し、 「この歌を沖縄の空に離してやりたい」と琉球新報の直筆メッセージ広告で書いていたこと、 昨年のライブで歌ったその『風化風葬』の歌詞に、 「大丈夫、あなたはすぐに私を忘れるから」とあって、「おや?」と思ったこと、 それらを思い出して、ある意味「やっぱり」と思いました。
いくつかファンサイトを回ってみたのですが、 やはり熱心なファンほど冷静に、 「残念だけど本人がそう言う以上仕方がない」 と素直に受け止めているのが印象に残りました。 私もそう思います。 私は Cocco は稀代のアーティストだと思いますが、 それは彼女の作品があらゆる点で、感情であれ、狂気であれ、優しさであれ、 虚飾を廃した本物のものであるところから来るものだと思います。 そしてそれらの底に一貫して流れるものは、 故郷である沖縄への強い想いだと思います。
色々なところで、彼女は「自分のために歌う」のだ、 と言っています。 ということは、自分のために歌う必要がなくなった、 ということで、それはそれでめでたいことなのかもしれません。 最後になるアルバム『サングロース』、 楽しみに待っています。
この日、 やはり『ブーゲンビリア』、『クムイウタ』、『ラプンツェル』の 3 枚のアルバム、 そして今回のシングル『羽根 〜 lay down my arms 〜』を、 続けてぶっ通しで聴いてみました。 初めてメジャーデビューシングル『カウントダウン』を、 CD 試聴コーナーで聴いた時の衝撃、 『Raining』を歌詞カードを追いながら聴いて戦慄した日、 『しなやかな腕の祈り』を聴いて何とも言えない切ない気分になったこと、 さまざまな記憶が蘇ってきます。 デビュー時からずっと支持していたアーティストが引退してしまうのは、 今回が別に初めてではありませんが、 これほど素直にそれを認める、というより祝福することができるのは、 今回が初めてのような気もします。
『羽根 〜 lay down my arms 〜』の冒頭、 「あなたを撃ち落とした私の蒼い武器は錆びてしまった」というフレーズを聴けば、 ファンならばデビュー曲『カウントダウン』の歌詞を思い出すことでしょう。
何も思い残すことはありません。 昨年 3 回もあんなに物凄いライブを体験できたこと、 特に、本当にファイナルライブになってしまったあの武道館を体験できたことは、 最高の思い出です。 今まで本当に素晴らしい作品をありがとう、それだけです。
「もうすぐ散るよ 羽根は燃え尽きて 空へ帰る」(『羽根 〜 lay down my arms 〜』)
「お姫さまなのはあと数分で、それが過ぎれば私はただの沖縄の女です」(昨年の武道館の MC)