2000 年 6 月 18 日 (日) 日比谷

今日は、 [S]Cocco のアルバム『[S]ラプンツェル』を、 予約購入した人を対象に抽選で招待された『Free Live 30 分』が、 日比谷野外大音楽堂で開かれる日です。 おそらく、 近所で行われている「記帳」に配慮してか、 チケット配布方法に変更があったとのアナウンスがあり、 多分出来るだけ人を並ばせないように、 抽選 (というか、整理券とチケットとの交換時の出たとこ勝負) で席が決まるようになっていました。 とはいっても、やはり出来ている長蛇の列。 なかなか大変です。

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というわけでチケットを入手。 ちゃんとしたチケットぴあ発行のチケットで、 私の席は B 9 列 61 番。 後でわかったのですが、 真ん中よりは前の、 ちょっと右よりの列でした。 なかなかすばらしい。

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しかし、暑い。 あとは開場時間の 18:30 まで待つだけです。

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さて、いろいろとブラブラして、 開場時間がやってきました。 Free Live とはいえ、 やはり会場は完全に満員です (そりゃそうでしょう)。

私はこれが初の「生あっちゃん」であることもあり、 どんなライブになるのかとドキドキしていました。 先にセットを書いておくと、こんな感じ。

と、6 曲の構成でした。

19:30 が過ぎ、そろそろ夏の夜が訪れ、 心地好い風邪が吹き出した頃、 まず、彼女がステージにやってきました。 大きな歓声が上がります。 白いワンピースに、やはり裸足です。

さて、最初の『かがり火』が始まると…、 なんか、すごいヘッドバンキングするのですね。 しかも、何と言うか、ロングヘアがそれで揺れて…、 なぜか私の脳裏には「貞」という文字の念写、 もとい、「貞子」という単語が浮かんでおりました (^^;。 Cocco という人の「ひととなり」というのは、 なかなか常人には把握できないところがあるのですが、 声が若干震えているのは、 おそらく緊張しているのだと思います。 あと、PA が楽器を強調しすぎで、 いわゆるロックバンド的調整になっているのがちょっと不満です。

しかしなんというか、すごく特殊な意味で「自然な人」です。 天才性と危うさが表裏一体という点では、 この人の上に出る人はなかなかいないでしょう。 たとえ声が多少震えていたりしたとしても、 その迫力がひしひしと伝わってくるのです。 そして、たとえ緊張していても、 やがてその緊張のレベルを、 表現の衝動が上回ります。

『水鏡』『樹海の糸』と進むたびに、 緊張がどんどん隠れていくのか、 声の艶もどんどん上がっていきます。 そして、私の脳裏にはもう一つの単語が浮かんできます。 「巫女」。 彼女の中はただの空洞で、 何かが彼女を借りて表現を行っているのではないか、 そんな妄想が浮かんできます。 所在なさげに、でも何かを掴むかのように下に向けられた左手、 その手は空気の中にある何かを握りつぶそうとするかのように固く震えています。 そして、遠くを射すくめるような視線と表情、 何もかもが異彩を放つ、まさに唯一無二の存在と言っていいと思います。

そして MC。 もしかしたら、 日本語が喋れないのではないかと思うようなあのたどたどしい MC で、 おでこをタランチュラのような蚊に刺されて、 いたくてバンドエイドを張っているので見ないでくれ、 とのこと。 いったい何処まで真実なのですかそれは? 私の人生経験が正しければ、 いくらなんでもタランチュラのような蚊は、 日本ではなかなか珍しいと思います。 少なくとも私の場所からはバンドエイドは見えませんでした。 あと、 「法律ではここでは傘を使ってはいけないことになっているから、 晴れて良かった」とのことですが、 そんな法律はありません (^^;。 多分それは運用規則です。うーむ。奥が深い人だ。

後半に入り、 ますます余計な緊張が解けた感じで、 物凄い迫力の歌を聞かせてくれた彼女でしたが、 特にラストの『けもの道』。 本当に物凄い迫力でした。 感動。解脱。 『けもの道』を歌い終わると、 まだ演奏をやっているうちに、 脱兎のごとく舞台の袖に走っていってしまいました。 ああ、どこかに走っていきたかったんだろうな、と思いました。

彼女は以前、BLITZ でライブが終わった途端に、 裸足のままで東京の街を走り去り、 3 日間行方不明になったことがあるそうですが、 それは彼女なりのさまざまな感情の表現の形の一つなのでしょう。 今度はどこまで走っていってしまったのか、 あるいは走っていこうと思ったけど、 やっぱりちょっと思い止まって楽屋で果てているか、 どっちでもいいです。 物凄い 30 分をありがとう。

P.S.: やっぱり今度のツアーは武道館よりクアトロで聴きたい! しかし、月はじめの息も絶え絶えの北海道での椎名林檎といい、 今日のシャーマン Cocco 様といい、 今月は、こんなに物凄いライブばっかり聴いていいのでしょうか。 いや、川村結花のライブもとても良かったのですが、 方向性がちょっと違うし。


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