近いうちに旧東欧方面に行こうと企んでいるので、 予習に図書館からいろいろ借りて来て読んでます。
あと、うちにあるDVDの「映像の世紀」の一部をまた見はじめました…。
ある意味歴史の審判を既に受けた本。1988年発刊と言うことは、ベルリンの壁崩壊1年前。
いかに東ドイツ(以下DDR)の体制が素晴らしいか、日本はそれに比べていかにひどい社会であり東ドイツに学ばなければいけないか。そういうことが、美しい写真に混ぜられて蕩々と述べられている。
しかし一方で、東ドイツは今の中国などと異なり、一応は社会保障や福祉、賃金格差の解消等という点(一部党幹部などを除く)では、ずっと理想的な社会主義国であったことがわかる。ドイツ人のやることだから、なんか日本人にとっても理解しやすいんだよね。
まあ、格差云々! ということを今の政治家さんはいろいろ言っているけど、格差をなくそうとした社会がどのようなものとなるか、DDRはいいサンプルだと思う。国民性も似たところが多いしね。
壁崩壊前後にディープDDRであるライプチヒ・ドレスデン近辺に留学していた筆者のまとめたDDR論。
これを読むと、意外にDDRと日本社会との共通点があることに思い知らされる。先日例の「しょうがない」舌禍があったけれども、実は日本がもし仮に分断されていたら、意外にうまく社会主義国を運用したと思う。そうならなくてよかったと思うが。
DDRとの関係が強い人なので、統一後の旧DDR人の正直な感情が的確に描写されていて、非常によく分かる。あと、労働生産性の低さなどが、その一部は日本にも共通するものとして感じられる。
DDRでは女性は労働力として国家に奉仕するものとされ、基本的に専業主婦という存在はなかった。そしてその分育児に対するサポートは強力だった。ここまでは知っていたのだが…。
統一後、西資本が流れ込み、旧DDRの女性は資本論理で次々と解雇され、社会福祉は大幅に低下した。40年以上にわたって、社会に専業主婦という概念がなかった旧DDR女性は、家で途方に暮れることになったらしい。いろいろ考えさせられる。
ベルリンの壁が崩壊してから東西統一まで、当初は数年かかると思われたが、実際にかかったのは一年以内である。
その日々を西側の政権内部にいた筆者が日記形式で記述した記録。完全に西側視点から描かれているので、他のDDR視点からの本と読み比べるとパズルの空いたピースがパチパチはまっていくように感じる。
国際政治の流れの中で、いかに多くの偶然に助けられて東西ドイツが流血の惨事なしに、周囲の国家の同意を得られる形で統一を実現したかが描かれている。
今では信じられないかもしれないけれども、周囲の多くの国は東西ドイツの統一に大反対だった。それを解決しても、統一したドイツが西側軍事機構である NATOに加盟すると言うことは、DDRがワルシャワ条約機構を離れてNATOに移行すると言うことになるが、これがいかにかつてのソビエトにとっては信じられない耐え難いことか…。
面白い本だった。同時に思ったが、こんな平和なシナリオは少なくとも今の南北朝鮮には多分無理だ。
あの本田勝一センセイがDDRについて書いていたとは知らなかった。しかも壁崩壊後の微妙な時期に朝日新聞に連載したというからびっくり。どんなDDR擁護が読めるかと思って期待したら、意外にフェアな記述で正直がっかり(笑)。
でも読み物としてはおもしろい。田舎に行って宿がなかったらと思ってまずは西ドイツにテントを持っていったら、「ドイツでは野宿禁止です」…東に行ったら「DDRではもっと禁止です(笑)」。テントを持っていく根性が素敵だわ、本田センセイ!
西のビールはどれも日本のビールよりうまいが、DDRのビールはハノイに続いて世界二番目にまずい。酒場のトイレは中国並み、など、DDRに対する愛の感じられない(笑)、実感のこもった旅行記として面白い。
そしてちゃんと東西のビール工場も両方取材してその原因も追及している。やるじゃん、ジャーナリスト、本田センセイ。
DDRビール工場は、不衛生な施設に、旧式のビール瓶詰め機は、しょっちゅう瓶を割ってしまうため、ボンボン爆発音が響いているとのこと。床は割れた瓶と無駄になったビールでぐしょぐしょ。これを裏庭に投棄するので、きれいだった湖もヘドロのように…。確かにこれじゃ生産性のへったくれもないよなぁ。
あと、環境汚染ってのは今の中国もそうかも知れないけれども、共産主義国の宿痾なのかね。かつては資本主義の害悪の代表のように語られたものだが…。
てなことで、とても面白かったよ。
1988年、ハンガリーのTV局に、迫害の末に地方に引退していた「プラハの春」当時の第一書記A・ドプチェクが1968年のチェコスロバキア事件を自ら語ったインタビューをまとめた本。
ハンガリーで放送され大反響を得ることは勿論、漏れた電波がチェコでも受信され、その後の歴史に影響を与えたとされる。
本人の証言をまとめたものなので、記憶の混乱やとりとめのなさは否めないが、とてもそこにまとめられた内容は興味深い。さまざまな伝説とその真相などが語られている。
それにしてもチェコの近代史は悲惨だ。イギリスやフランスの反戦世論によって、チェコはナチスに対する生け贄に差し出される。ナチスの敗戦で解放されたと思ったらソビエトの勢力圏に入れられ、社会状況を改善しようと思ってグラスノスチやペレストロイカの前身のような政策を始めたら数ヶ月でソビエトが戦車で蹂躙…。
その最前線にいた人物の証言、とても興味深い読み物でした。
1968年11月(上巻)、1968年12月(下巻)に発刊された、チェコスロバキア事件(1968年8月)に関するさまざまな資料集。当時の歴史的な声明、文書、各国マスコミの反応、言論人の声明などが日本語訳されてまとめられている。
なんと事件後数ヶ月でこんな本が自国語で発行され、それが図書館に収蔵され、さらにその初版本を自由に借りて読めるんだから、日本という国の文化的な底力というものは結構すごいと思う。
さまざまな後世の歴史的評価が入る前の、当時の「空気」を伝えてくれるから興味深い。上巻の最初に付いている幾人かの解説にも、中国の文化大革命を肯定的に記述しているものもあったりする。
何と言っても、事件発生後のさまざまな社会・共産主義国や、西側各国共産党の反応(賛否、そしてその理由)が何とも面白い。