2004 年 5 月 6 日 (木) 自宅

輸入盤 CD 規制に関するシンポジウムの情報をメールでいただく。 ニュースで小耳に挟んで気にはなっていたのだが、 まさかここまで状況が悪化しているとは思わなかった。 それでも安価な邦楽のアジア正規盤の還流阻止のみかと思っていたら、 洋楽輸入盤 CD の規制の可能性が浮上しているという。

そもそも、CD はオープンな国際規格であり、 DVD のようなリージョンコードも持っていない。 そのため、地球の裏側のマイナーな国の CD でもそのまま再生することが可能であり、 事実そのような CD の探索は思わぬ出会いを生み、楽しい。 運送上も保管上も扱いの楽な CD の登場によって、 世界中の音楽を楽しむことができるようになったことが、 音楽文化に悪影響をおよぼしたのだろうか? そんなはずはない。

ところが、音楽業界はこういうものまで一切合切まとめて取り締まる方向らしい。 CCCD 登場の時も思ったが、 どうしてこう一般的な消費者の直感に反する方向に動きたがるのだろう? CD が最近売り上げが減少しているのは、 海外版の還流や不正コピーが問題というよりも、 CD の価格が高価すぎることと、 CD や、ひいてはシングル、アルバムという音楽メディアの形態が寿命を全うしつつある、 というのが根本原因であると考える。

レコードの登場により、「音楽」は直接販売されうる「商品」となった。 そして、さまざまなレコードの規格のうち、 扱いやすさと売り方の都合の擦り合わせにより、 シングル盤とアルバムという売り方のスタイルができあがった。 CD が登場したが、基本的にはこのスタイルを踏襲し、 シングル CD などというムチャな規格を作った上で、 従来の業界の商売のスタイルを温存した。

しかしあまりにこのスタイルが長く続いたため、 音楽業界自体が、 商売のスタイルには何の疑問も抱かずサイクルを繰り返すようになってしまったのであろう、 すっかり自己改革の意欲などを失ったどころか、 そのような発想自体を無くしてしまったように思える。

そのうちに情報機器の進歩により CD をコピーすることが可能となり、 音楽はネットワークを利用して瞬時にやり取りが可能になった。 その時代の変化に音楽業界は何をしたか? 驚くべきことに、単にこの流れを無視するだけではなく、 抑圧しようとしたのだ。 私は著作権を非常に重要な近代的概念だと考えており、欲しい CD は全て買っている。 だが、それゆえになおのこと、 このような前時代的な商売スタイルを保持する体質には我慢がならない。

そもそも輸入盤規制問題などというのは、 本来音楽業界がきちんとネットワーク時代を見据えた上で、 新しい音楽の販売スタイルを一から構築し直していたとしたら、 本来とうの昔に存在しなかったはずの問題なのだ。 現在のところ、音楽業界にはネットワークと共に発展する未来はない。 CD の次世代規格へのリージョンコードの導入やコピーコントロール機構の導入などは馬鹿げている。

今まで、ウォークマンの登場でユーザは部屋から音楽を解き放ち、 PC や iPod のようなデジタルジュークボックスによって、 CD というメディアから音楽を解き放った。 それをユーザは求めたのだ。 音楽業界はそれを再び元に押し戻そうとしているが、 CD をたくさん買っていた層こそが、 そのような「自由な音楽の楽しみ方」を望んでいたことを軽視している。 私は、自分の部屋で CD プレーヤーにいれないと音楽が聴けなかったりするなら、 CD なんて一切買わないよ。


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