『PX-W5232TU/NE PLEXWRITER Premium-U』
(Personal Computers, 2003-05-30)
昔から、高級 CD-R といえばやはり Plextor。 その Plextor が出した究極の CD-R/RW ドライブ、 それが Plexwriter Premium だ。 52 倍速書き込み、1GB 書き込み、 パスワードセキュリティなどの表面的機能ばかりではなく、 現状で販売されるほとんどの「エラーを含んだ偽 CD」に対しても、 安定したリッピングが可能なのも大きな特徴だ。
さて、実は突然、Plextor PX-W5242TU/NE Plexwriter Premium-Uを購入したのでありました (USB 2.0 接続)。 まあ、いくつも CD-R ドライブを買ってから結局 Plextor に落ち着くのは 2 度目かな〜? などという感じなのですが、 何を悲しくて今時たかが CD-R/RW ドライブに 2 万円も払うのかというと、 それにはきちんと理由があるのでありました。
うん、カッコいいなぁ〜。
付属ソフトは Nero 5.5。 しかしこのドライブ、本当に面白いのは Nero ではなく、 Plextor 独自のソフト Plextools Professional がついているのです。 まあ、詳しくはこの製品紹介ページを見てくれ。 Nero がなくてもほとんどの CD-R の操作ができるだけではなく、 メディア品質の測定、C1/C2 エラーの測定なども可能なのです。
てなことで、うちのキューブマシンに接続。 このマシン、 キューブのくせにこれで 4 台の光学ドライブが接続されることになります。
さて、ソフトをインストールしましょう。
このドライブの特徴は (究極の CD-R ドライブと呼ばれることもあり) いろいろあるのですが、CCCD への耐性の高さにあります。 世の CCCD と呼ばれている各種フォーマットは、 ほとんどこのドライブの前では意味をなしません (少なくとも音楽トラックの吸出しは全く問題ありません)。
この Plextools Professional を用いて、 各種 CD の C1/C2 エラーを測定することで、 いろいろ面白い状況が見えてきます。
最近、原則 CCCD を採用する、 と発表していたレーベルからでてくる CD の、 CCCD 率が下がっているように思われます。 Avex に関しても、 Shela 『Garden』が CD-EXTRA で CCCD ではありませんし、 SME に関しても結局 CCCD でないアルバムが次々と出ています。 東芝 EMI は宇多田ヒカルや矢井田瞳、 鬼束ちひろなどの稼ぎ頭たちが CCCD 化に頑固に抵抗しており、 うれしい限りです。 とりあえず、音楽ファンの多くが CCCD に拒否反応を示したことが、 もしかしたら無駄ではなかったのかも知れません。 この調子で CCCD 自体なくなってほしいのですが…。
とりあえず、手元の CD を何枚か C1/C2 エラーの測定を行ってみましょう。 多くの邦楽 CD は C2/CU エラーは皆無、 C1 エラーがトータル 2000〜4000 程度が多いようですが、 特に一部の洋楽 CD にはひどい品質のものもあるようです。 これはEVANESCENCE "Fallen"。 C2/CU こそ 0 であるものの、C1 エラーは 30583 も発生しています (縦軸が入りきらなかったので、 このグラフは他のグラフと縦軸のスケールが異なっています。 他のグラフのほとんどは 30、このグラフは 50)。
典型的な CCCD (たぶん CDS200) のパターンをいくつか示します。 特徴は、エクストラデータトラックとの間の大きなギャップと、 音楽トラック全般に発生する大量の C2/CU エラーです。 しかし、これだけ激しく補正不能 (CU) エラーが出ているというのは、 結構ショックだなー。 余談だけれども、Michelle Branch 『Hotel Paper』の国内盤は、 最近もっとも腹が立った CCCD 化でした。 何と、当初 CD-EXTRA によるおまけつきと広報しておきながら、 いきなり直前に CCCD に変更という顰蹙ものの決定。 買うなら絶対 US 盤 (こちらは当初の予定通り CD-EXTRA でしかも安い)。 日本人をなめるな!
ところが、どうもエイベックス、最近少し妙な動きをしているらしい。 Cyber X 『Cyber X #01』の測定をしてみると、 なんと C2/CU の発生がゼロである上に、 C1 も優秀な通常 CD と同じような値なのです。 ためしに、CCCD を入れると必ず発狂していた、 Philips のドライブにこのディスクを入れると、 何と何の問題もなくリッピングできてしまいました。 これは…どう解釈したらいいのか? もしかして、これって「なんちゃって CCCD」なの?
…ということを調べるため、もう少し新しいエイベックスの CCCD を買ってきました。 島谷ひとみ『GATE -scena III-』。 これも同様に C2/CU がないのですが、 さらに不思議なことは、例の妙なエンコードされたエクストラトラックのサイズが、 あまりに小さすぎることです。 音楽トラックが 68 分ほどもあるのに、 エクストラトラックが 4 分しかない。 これではいくら圧縮しても、最盛ソフトに入れることは無理なのではないかと思うのですが…どうなっているんでしょう? しかも、ちゃんと Philips のドライブではリッピングできない…。 やはり「なんちゃって CCCD」ではないようです。
エイベックスは、CCCD の音質でいじめられたので、 エラーを減らす新しい技術を採用したのでしょうか? ちなみに私は CCCD の本質は私的複製の制限にあると考えているので、 音質は二次的なものと考えています。 したがって、音質の問題だけを解決したところで、 何ら CCCD に関する私の評価が好転することはあり得ません。
最後に、畠山美由紀。 『fragile』が CCCD で発売されたとき、 「何考えているんだ東芝 EMI。 こんなディスク好き好んでコピーするようなやつがどれだけいるんだ?」 と怒った記憶も新しいのですが、 ニューアルバムが CD-EXTRA でめでたく CCCD ではありませんでした。 ふう。 あまりに『fragile』の盤の質がひどい (C1=110592 で、ほぼ 3 セクタに 1 の割合で C1 が出ている) ので、このグラフも縦スケールが 200 (!) になっています。 これに対してニューアルバムの方は、もう最高!な状態。
しかし、こう見るとやっぱり CCCD はやめてほしいなぁ…。