2003 年 4 月 21 日 (月) 渋谷

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篠原美也子『SPIRAL』

(CD, 2003-04-21)

今や全部廃盤になってしまった、 メジャーレーベル時代の曲たちをピアノ一本でセルフカバーしたアルバム。 懐かしくも色褪せない…。


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篠原美也子『bird窶冱-eye view』

(CD, 2003-08-20)


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篠原美也子『新しい羽根がついた日』

(CD, 2001-04-25)

これが出たときは嬉しかったなぁ…。 インディーズでの復活 1st アルバム。


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篠原美也子『Magnolia』

(CD, 1998-11-06)


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篠原美也子『河よりも長くゆるやかに』

(CD, 1995-10-04)


今日は篠原美也子デビュー 10 周年ライブです。 2003 年 4 月 21 日はファーストシングル『ひとり』 (実はこの間やっと手に入った…) が発売された 1993 年 4 月 21 日からちょうど 10 年。 そうかもう 10 年か〜、いろいろあったな〜。

しかし、篠原美也子というアーティストを語るのは結構難しいかも知れません。 私にとっては、おそらくもっとも多くの回数、 ライブに行ったことのあるアーティストであり、 またもっとも長く聴き続けているアーティストです。 せっかくだからいっぺん 10 年の歴史をまとめてみましょう。

10 年前、ふとタワレコ新宿店の試聴コーナーで発見したのが、 発売されたばかりのデビューアルバム『海になりたい青』(1993/05/21)でした。 その歌詞の素晴らしさと音楽的な完成度の高さに、 私は一発でやられてしまいました。 しかし音楽業界は時あたかもタイアップ先行の売り方が全盛の、 バブルの残り香の強かった時期。 このような派手さのない音楽を、 しかもテイチクというあまりポップス系の印象のないレコード会社から出していたという点は、 今後の行き先に不安を感じさせるものでした。

「平成の中島みゆき」とかいう、いいんだか悪いんだかわからない冠をかぶらされ、 その後わずか半年で『満たされた月』(1993/11/21, まだ Amazon に在庫あるのね…)という素晴らしいアルバムをリリースするのですが、 一部に熱狂的ファンを作るものの、知名度はイマイチ。 その後、スランプからか結構壊れつつも『いとおしいグレイ』(1994/11/23)をリリース (アルバム自体の出来は好きです)。

この頃のオールナイトニッポンなどでの壊れっぷり(『いとおしいグレイ』ツアーのパンフに詳しい)は物凄かったので心配していると、いつの間にか東芝 EMI に移籍、 おお、今度は大手、と思ったのですが、しかしそこはまた大手の辛いところ、 アルバム自体の出来はかなり好きだった『河よりも長くゆるやかに』(1995/10/14)と『Vivien』(1997/02/05)がさっぱり売れなかった後、 大幅に売れ筋を意識した変更を余儀なくされ、 出したアルバムが『magnolia』(1998/11/06, これも在庫あり)。 しかし路線変更によって今までのファンまでがついていけなくなったのか、 さらに売れず、結局 1999 年に所属事務所をクビになります。

普通ならここで終わってしまいそうな展開だけれども、 「逸材を放置しておいてはいけない」と思う人がいたのか、2000 年 4 月、 ふとした拍子にShibuya NESTで行われていた『東京百歌』というアコースティックライブイベントにピアノ一本で出演。 このイベントのレギュラーとして出演し続けることで、 商売を離れたこともあってか安心して無事に原点回帰していきました。 そして次第に昔のファンが戻って来ただけではなく、 地道に新たなファンも増やしていきました。

そして 12 月に Shibuya NEST でついに再びワンマンライブを行うことになりました。 90 年代の挫折をバネに、 以前よりずっと深みのある曲を歌うようになっていました。 『東京百歌』も規模を大きくし ON AIR WEST に移動、 そして 2001 年 4 月のライブに合わせ、 インディーズから『新しい羽根がついた日』(2001/04/25)をリリース、 このライブで「やっと本当に帰ってきたんだな」と私は思いました。

その後も『東京百歌』と共に歩みながら、 多くのライブイベントに参加しつつ、 2002 年には『Birds' eye view』(2002/03/15)をリリースしたと思ったら、 デビュー 9 周年ライブの日 2002 年 4 月 21 日に突然の結婚。 しかも 9 月に産休に入ったと思ったら 2002 年 12 月にはジュニアまでリリース、 2003 年 3 月に産休明けして今日に至る、 という感じですか…。 今更ながらかなりすごい人生送ってるなー (^^;。

こういう「谷あり崖あり」の人生の中で、 何度もブッ壊れつつ、 それでも本人よりあきらめの悪い周囲の人々の助けをきちんと活かしきってどっこいちゃんと生きている、という姿勢というものは、 どんな時でも見習いたいものだな〜、と思っています。 もとより彼女の曲のいいところの一つは、 「努力してもダメなときはある、仕方ないね」とかいう内容を、 中途半端な希望を持たせることや慰めることなしにはっきりと歌っていたことにあると思うのですが、 まさにそれを自ら実践しているところは首尾一貫していてとても偉いと思います。

てなことで、前置きばっかり長いけど、今日のセットリストだ (未発表曲は (*) でマーク)。

  1. Dear
  2. LIKE 17
  3. 名前のない週末
  4. maybe (*)
  5. 前髪
  6. HERO
  7. 満天
  8. 子守歌1 (*)
  9. 冬の夜
  10. ジレンマ
  11. flower
  12. You're so cool
  13. 秒針のビート
  14. 風の背中
  15. ひとり
  16. OUR (*)
  17. [Enc1] 誰の様でもなく
  18. [Enc2] 愛している
  19. [Enc3] S

今回、セルフカバーアルバム『SPIRAL』が発売になったことで、 昔の曲もピアノソロ用に新たにイントロなどが起こされ、 伴奏なども多少お色直しがされた曲もあるけれども、 基本的には 10 年前の曲も全く色あせていません。

今日もステージの上には電子ピアノ一本。 最初の『青』は、アルバムから入った私がはじめて聴いた篠原美也子の曲でもあります。懐かしい…。

『前髪』と『HERO』は…、泣けてきます。 特に『HERO』は、 「この曲が書けたからもう一度歌ってみる気になった」 という MC がありました。 この曲は復活後に聴いて、 まさにあの敗北の体験が前向きな形で昇華されているな、 と感じた曲でした。 勝者となることは難しいけれども、 誇り高き敗者となることはなお難しい、のでしょう。

夢から覚める時を思って
夢見る人はどこにもいない
力ではなく 名前でもなく
わずかに残る誇りを守る

時節柄、戦争に関する MC に続いて『ジレンマ』と『flowers』。 本来ミュージシャンなんてのは「戦争反対」と叫ぶと安易に無難だという職業で、 特に最近の SMAP などの歌には反吐が出そうになっていた私ですが、 ここで純真な若者などには大いに誤解されそうな MC を敢えてしたことには、 私は心の中で喝采しましたね。

『秒針のビート』は復活後初ワンマンの最初の曲だったこともあり、 私的にも想い出深いなー。 ラストの曲は未発表の『OUR』。 子供が出来てから、こういう曲も出来るようになったんだ、 と思いました。とてもいい曲です。

アンコールは、今日が結婚記念日ということもあり、 結婚式の後のパーティで着たという、 いしのだなつよ特製のドレスで登場。 「昔ずっと歌えなかった時期があったのだけれども、 今は胸を張って歌えるようになった」という『誰の様でもなく』。 ……そうだろうなぁ。 そして、『愛している』、『S』。

うん、まさにデビュー 10 年にふさわしい素晴らしいライブでした。 感涙。 うちに帰って『SPIRAL』初回限定版のおまけの、 セルフライナーノートとエッセイ集を読みました。 感涙。うるうる。 エッセイ集の中には、 復帰ワンマン直後の Web に書かれたこの文章も載っていました。 ライブを見た直後、この文章を読んだ時の幸せな気分を思い出しました。

この人の歌が、昔より今の方が輝いているのは、 本当の意味で生き方自身が自分の歌とイコールになっているからだと思います。

私は全力で闘い、そして敗れた。ただ、だからといって人生は終わってはくれない。私が今、今までのどんな時期にもまして負ける気がしないのは、勝とうとしていないからだ。
(2001/03/30 http://www.geocities.co.jp/MusicStar-Guitar/3094/fromMiyako30.htm)

いい言葉だと思う。 なんか、カッコいいぞ。この敗者 (^^; ! そして、あきらめの悪かったスタッフと、 もっとあきらめの悪かった困ったファン達に乾杯!


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