2002 年 11 月 20 日 (水) 自宅

懲りずに CCCD の話だ。 なんと、SME が コピーコントロール CD を採用するのだそうだ。 あーあ、CD の産みの親とも言える SONY 系列の企業が CCCD を採用するとは、 もう世も末だね。

ただしこのシステム、 以前の avex、東芝 EMI などの極悪なシステムよりはかなりましだ。 ネット認証によって ATRAC3 のデータを吸い出すことができるようになっている。 OpenMG 系デバイスにはコピーすることが可能だ。 だから問題を整理する必要があるだろう。

したがって、少なくとも以前の CCCD よりは、 この方式自体はある程度評価できるのだが、以下の点が守られるかどうかが、 以後評価をするかどうかを決めるポイントとしたい。

  1. 標準化を行うつもりがあるのか

    いやしくもフィリップスとともに CD の規格作成に関わった SONY である。 この技術を国際標準化し、 他の企業も適切なライセンス料で利用できるようにする意図があるのかどうかだ。

    現在、個々の企業が勝手に CD の規格に沿わないディスクを出し、 それによって利用可能な制限されたデジタルデータの格納方式はまちまちである。 そのため、 デジタルライブラリとして PC や iPod のようなデバイスを利用したい場合、 CCCD のデータはコピーガードを回避可能なドライブでリッピングを行うという、 著作権法的にグレーな手段を用いない限り、 統合的にそれらのデータを扱うことができない。

    ある程度のコピーガードの機構は仕方のないことかも知れないが、 このようなゲリラ的手法でそれを実現したこと自体が、 消費者に対する背信行為に近いものであると思う。 そしてそれは、いかにその技術が良いものであっても、 標準化できていないという点自体が問題を残す。 是非標準化を期待したい。

  2. 価格を安くする気はあるのか?

    コピーをできなくして、かつデジタル吸出しに追加料金をとる可能性がある、 と表明する以上は、もちろん価格を下げてくれるのだろうな、 と想像するのが当然だ。

    これで従来通りの価格でリリースを行うのであれば、 それはアクティベーションを入れながら、 Windows XP や Office XP の価格を下げなかった (どころか値上げした) 某独占企業と大差ない。 いつかは消費者に見捨てられることであろう。

ところで、トップページの一言トピックでも書いたが、 今年出た KOKIA の 2nd アルバム 『trip trip』 をふとした拍子に買って以来、ああ、ええなぁ〜、と思っているのだ。 で、問題は、KOKIA の 1999 年発売の 1st アルバム 『songbird』が、なぜか突然 Amazon.co.jp で CD 売り上げ 10 位などに入っているのだ (KOKIA に関しては、今度 CD レビューを書くときにまとめて書くよ)。

最初、原因が全く不明だったのだが、 レビューに「(・∀・)イイ!」とか、 レビュータイトルに「KOKIA 祭」とか書いてあるところを見ると、 やはり某ちゃんねらー達の仕業かな、と思ったものの (^^;、 どうも某ちゃんねるを読んでも実態がわからない。 と、ぼそっと一言トピックに書いたところ、 メールで教えていただいたのだけれども、 どうもまた Flash 系で盛り上がっているらしい。 まだその Flash 見ていないけど、なんとなくスレッドを読むと雰囲気がわからないでもない。

まあ要するに、 この間のBUMP OF CHICKEN 『K』の件と一緒なわけね。 そういえば『K』の収録された『THE LIVING DEAD』も、 旧譜のわりに妙にランキングが高い。 この手の Flash、著作権法的に見たらちょいとアレなので、 本来眉をひそめるべきなのだろうが…、 この CCCD などをめぐる昨今のリスナー不在の音楽業界事情を考えると、 はっきりいってメチャクチャ痛快だ!

リスナーが、「(・∀・)イイ!」と思った音楽をフィーチャーして自分の作品を作り、 それがネットで広まり、 そしてその結果として元の音楽が売れているのだ。 どうせならオリコン辺りのメジャーなチャートも無視できないくらい、 突発的にこの手の作品が売れてくれたらと思うと、 楽しみで仕方がない (^^;。

コピーを血眼になって防いでもいっこうに売れる気配のない CD と、 著作権法上問題のある手段で広がっても、 それゆえにしっかりと売れる CD がある。 この現実を見てくれよ。 本当に良いものはコピーされても売れるんだよ。

著作権法が私的複製などの多数の例外事項を設けていることや、 そもそも著作権法違反自体が親告罪であることは、 著作権法が文化の流通を促進するために定められたルールであり、 かつそれはしばしば弾力的に運用されなければならないという思想のもとに作られているということを意味しているのだろう。

たとえばいっぺん avex は想像してみた方がいい。 もし浜崎あゆみの『poker face』以来のすべての作品が CCCD だったとしたら、 今、avex という会社は存在していないかもしれないよ。 浜崎あゆみという存在が、 一部の世代にウィルスのようにコピーが広がったからこそ、 今の avex があるのだ。

iPod での MP3 ユーザ (不正コピーは一切なし) としては、 MP3 が著作権保護機能を欠いている以上、 大手を振って業界が推進できるようなものでないことは承知している。 だから ATRAC3 にしても、ある程度以上広まるように業界標準化してくれれば、 特に反対する気はない。 しかし同時に、何か他にもやることはあるのではないかと思うのだ。

特に、誰がこんなものコピーするんだ、 としか思えないようなマイナーな新人にまであまねく出来の悪いコピーガードをかけている avex や東芝 EMI は、大いに考え直すべきだ。


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