2000 年 6 月 5 日 (月) 札幌 (ネタバレ)

と、いうわけで、 <1>椎名林檎『<1>下剋上エクスタシー』@北海道厚生年金会館のライブレポです。

今回の公演は、この一連のツアーでわたしが見た中で、 もっとも彼女の体調が悪そうな感じで、 かなり喉の調子も悪そうでした (はっきりとは見えませんでしたが、 ミネラルウォーターだけではなく、 噴霧器を使っていたように見えました)。 今までの回で毎回普通に歌っていた箇所でも、 床にへたりこんでしまっている場面もあり、 演技ではなく、 本当に倒れそうになっているのではないかと思いました。 多分初めてみた人もそう思ったのではないでしょうか。 当人もままならない体調に、 途中で自分に怒りを隠せない感じがかなり強く感じられました。

でも、ものすごく不謹慎な言い方をするようですが、 今回の公演に、今まででもっとも感動しました。 生と死の狭間を演出した今回のツアー内容と、 あまりに重なりすぎていたからかもしれません。 でも、特に、しばらくマイクの前でせき込んだ後、 不調の体の最後の力を振り絞るような迫力で始まった『罪と罰』。 物凄かったです。 すごく失礼なことを書いているような自覚はあるのですが、 でもあれだけの物凄い歌を届けられるというのは、 本当に素晴らしいことです。

ということで、ライブレポに戻ります。 さて今回、私は 6 列 43 番という席で、 なんとなく滅茶苦茶右寄りでは? と思ったのですが、 実際に行ってみるとこれがかなり中央寄り。 実はとても良い席であることが判明しました。 今回で私は『下剋上エクスタシー』最後とのことで、 気合いが入っています。 ちなみに、今回はいつもの連れが仕事が忙しく行けなくなってしまったため、 ふとした事情で札幌在住の方 (昨年の RSRfes は体験したのだが、バンド形式の生林檎は初めてとのこと) に一枚チケットをお譲りしたのでありました (ちなみに、yahoo オークションのようにボッてません ^^;)。 今回もふざけた事前アナウンスあり。 だんだん慣れてきたのか堂に入ってきましたね。 はっきり言って、今回の事前アナウンスはとっても面白かったです。 評価高し、ススキノでぼったくられた楽器係の○○くん (ごめん、名前忘れた)。

今回のセットリストはこんな感じです。 ちょっと自信ないです。間違っていたらすみません。

  1. 月に負け犬
  2. 弁解ドビュッシー
  3. 君の瞳に恋してる
  4. 本能
  5. Love Is Blind
  6. 積み木遊び
  7. あおぞら (悦楽編)
  8. ギブス
  9. ギャンブル (新曲)
  10. やっつけ仕事 (新曲)
  11. 正しい街
  12. 警告
  13. ここでキスして。
  14. アイデンティティ
  15. 幸福論 (悦楽編)
  16. 罪と罰
  17. 歌舞伎町の女王
  18. 浴室
  19. 依存症
  20. シドと白昼夢
  21. 病床パブリック
  22. (アンコール1) 同じ夜
  23. (アンコール2) 丸の内サディスティック

初期と変った部分に関して、 強調して書いています (あと、今回は「虚言症」がなかったと思います)。

スクリーンにギターを抱えた林檎嬢のシルエットが浮かび、 「月に負け犬」が始まると、 かなり会場は盛り上がっています。 北海道のライブは盛り上がらないという話も聞いていましたが、 そんなことはありませんですね。

この後、若干曲順が変わって『弁解ドビュッシー』が入りました。 会場は盛り上がっているのですが、 あれ、ちょっと今日は体調悪そうかな、 とこのあたりで気がつきました。 『君の瞳に恋してる』は、 それでも素晴らしい声を聴かせていただいたのですが、 ラストあたりでかなり辛そうになっていて、 本人もイラついているのがなんとなく伝わってきます。 『本能』もかなりいつもと比べて声が出ておらず、 あと、本当にフラフラになりながら歌っていそうな感じです。

でも、そんな中で歌った Janis Ian の "Love is Blind"。 これは本当に体の底から振り絞るような声で、 あまりの迫力に呆然としてしまいました。

ここで、MC が入りました。 やっぱりかなり辛そうです。 以前の公演では『虚言症』があったところを外していきなり『積み木遊び』ですが、 最初の「正拳突き」が出なかったところをみると、 やっぱりかなり辛いのでしょう。 しかし、後半では何事もなかったかのように復帰していました。 今日は本当に危ういです。 このあとさらに激しい『あおぞら (悦楽編)』が入るのですが、 会場は相当に盛り上がっています。

この後の『ギブス』もすごい迫力でしたが、 後の新曲二曲も、 体調不良を感じさせない素晴らしい出来でした。 ここで、以前の公演では外されていた『正しい街』が入ったのですが、 これはさすがに声が辛そうでした。 なんか、このあたりですでにステージの上でボロボロになっている感じがあって、 こんなこと言っていいのかわからないけど、あまりに痛々しかったです。 でもさらに『警告』までキメていました。 大丈夫でしょうか? 『ここでキスして。』のアカペラも、 直前まで本当に辛そうで、 (私の体感で) 30 秒くらい動作が停止していましたが、 いざマイクの前に立つと、 あの脳天から爪先まで染み通るような声のイントロを聴かせてくれます。 物凄いです。 いつもならここで大歓声が入りそうなものですが、 はっきり言って圧倒されていました。

さらにこの後、 『アイデンティティ』と『幸福論 (悦楽編)』の激しい 2 本があったのですが、 オーケストラピットの方まで寄ってきて、 会場は激しく盛り上がっていました。 『幸福論 (悦楽編)』で入った、 メンバー紹介のミナチン、 「昨日、6 月 4 日、 すすきので 5 万円ボッタクられたっ! 世の中、うまい話はないっ!」と、 気合いの入った自己紹介がありました。

『幸福論 (悦楽編)』の終わったあと、 またかなり辛そうな状態になって、 『罪と罰』のイントロも若干長めにのばしていたのですが、 ここで思い詰めたように「はっ」とマイクを引き寄せた後の、 あの『罪と罰』の出だしの部分。 圧巻でした。 この『罪と罰』、この日の最高の曲だったと思います。 もう歌い終わった頃には、 完全に床に伸びていました。 本当に大丈夫かよ、と思いつつ、 この後も『歌舞伎町の女王』、『浴室』と激しく続けていきます。

そして、『依存症』です。 この曲も、本当に最初は歌うのが辛そうだったのですが、 徐々に声を取り戻していき、最後は圧倒的な声で歌いきった後、 「血管で出来た樹」のようなセットが光の中に浮かび上がる時の開放感。 素晴らしかったです。

ツアーの最初のころと若干アレンジが違う気がする、 優しい音色で始まる『シドと白昼夢』、 そして、『病床パブリック』と、 盛り上がる 2 曲が続き (『病床パブリック』での林檎嬢のギターの弾き方、 滅茶苦茶カッコいいです)、 メンバーは退場、舞台はいったん暗転し、 静かに心拍の画面が流れます。

このあまりに今の状態に合いすぎている光景に、 アンコールの拍手が鳴り響き、 「もう一発」コールが飛びます。 多分、今までの会場でもっともこの拍手が盛大だったのではないでしょうか。

相当長く休んだ後に出てきた林檎嬢、 アンコールの『同じ夜』を歌います。 本当にこの曲は心にしみます (私が『無罪モラトリアム』でもっとも好きな曲です)。 特に、ライブで聴くときは、本当に感動ものです。 それに続けて、 ろうそくの最後の輝きのような『丸の内サディスティック』を、 激しく歌い切り、袖に去っていきます。 そして心拍音がどんどんゆっくりとなり、 最後に途絶えたとき、 今までのどんな会場でも聞いていない大きな拍手が、 会場を満たしました。 もうこれ以上アンコールも本当に何もなくていいです。 完全に燃え尽きてしまったようですから。 そう思いました。

というわけで (こう言われると本人はきっと嫌がるだろうと思うのですが)、 今回は本当に最高のライブでした。 生きてて良かった。


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