生協で SWITCH 6 月号を購入。今回は Cocco 特集だ。アイルランド取材で写 真も美しい。昨年日本でも上映された (今はビデオも出てます) リー・チーガ イ監督の『世界の涯てに』(原題『天涯海角』、1996 年、香港) という私の好 きな映画があるのですが、その後半のイギリスの田舎でのシーンで出てきたみ たいな、素晴らしい景色をバックにした写真です。文章の記事もとてもよく出 来ています。彼女の歌の世界をよく描ききっていると思います。
おまけにポストカードつき :-)。
Cocco の音楽は魅力的だ。『Raining』なんて、今時分にあれだけヒットした 曲にも関わらず、カラオケで平然と歌えるような歌ではない。あまりに重すぎ る。「歌を好きに『なりたい』」と語る彼女は、自分の歌のことを人生の排泄 物か吐瀉物とでも思っているのかも知れない。
でも、たとえば自殺未遂の光景を淡々と歌った『Raining』に満ちているのは、 なにげない死への情動であると同時に、限りない生への執着なのだ。強い声で 歌われる歌詞の中で、死への衝動と生への回帰、降る雨と照る太陽という対比 で語られる、そういうアンビヴァレンスが、最近の彼女の曲の魅力の一つかも しれない。
人生の排泄物であろうが吐瀉物であろうが、それを「好きになろう」と思うこ とは、勇気ある人間肯定の過程だろうし、そういう背景があるからこそ、彼女 の「歌を好きになりたい」という発言には、カラオケお姉さんが「歌が好きだ」 というのとは次元の違う想いが込められているのだ。
昔から聞いているファンには、最近の Cocoo の曲が変ったと言う人もいるよ うだが、それは本当かも知れない。以前の曲は割れたガラスの切っ先のように 尖っていた。それは今も変らないが、同時にそれを包み込む優しさを感じる曲 が多くなっている。『Raining』はそれをもっとも端的に象徴する曲だろう。 最新アルバムタイトルの『クムイウタ』は、沖縄の方言で「子守唄」の意味だ という。
私は最近の Cocco の曲が好きだ。メジャーデビューした頃に Cocco の曲を初 めて聞いたとき、注目すべき新人だとは思ったが、それほど好きなタイプだと は思わなかった。だが今はそうは思わない。また日本のアーティストに、大好 きな人が出てきたのはとてもうれしい。
(柄にもなく、真面目に評を書いてしまったぜ ^^;)。
Just FYI: http://www.cocco.co.jp/
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ほそかわ たつみ
< hosokawa@ntc.keio.ac.jp >