98 年 1 月 25 日 新宿

めずらしく新宿を一人でほっつき歩く (めずらしくないか…)。まず、映画 『ピースメーカー』を観る。先日『タイタニック』という大傑作を観てしまっ ただけに評点が辛くなるが、でも結構良くできていたと思う。悪役はボスニア 内戦で家族を狙撃され殺された核テロリスト。主人公のヤンキーの陽気さより、 この屈折した男の心理の方がはるかに理解しやすい。

そういえば、ハリウッド映画に出てくるパソコンは Apple 製 (しかも PowerBook) という最近の不文律があるようだが :-)、この映画ではめずらし くニコール・キッドマンが Digital Hinote Ultra 2 を使っている。いや、そ れだけなんだけど、珍しいな。

本を買いに紀伊国屋書店 (タイムズスクエア店) に行く。

本日の戦利品。じゃなかった、買ってきた本。

「悶絶映画館」
なんかトホホな映画がたくさん載っていて面白そう。まだ読んでない。

「Linux/FreeBSD 日本語環境の構築と活用」「FreeBSD 快適操縦ガイド」
以前は FreeBSD が取り上げられていた雑誌や本は全て買っていたのだが、最 近では数が増えてすでに雑誌に関してはギブアップし、本に関してもギブアッ プしつつある。まあ、いいことなんだが。

「現代のエスプリ - 血液型と性格 - その史的展開と現 在の問題点」
血液型性格診断というのはあまりに無邪気に日本で信じられているが、私が思 うに非常に有害な迷信か偏見の体系である。もちろん、個人的に楽しむ点まで とやかく言うつもりはないが、血液型による結婚差別や 就職差別が存在するという事実は、血液型性格診断有害論の根拠とす るのに十分だろう。
私も以前、電車の中で大声で「うちの会社は絶対 AB 型 は採用しないんだ。AB 型は仕事ができないからな」と自慢げに話すお じさんに遭遇したことがあるし、以前、新聞でも、ある大手メーカーが、採用 時・配属時に血液型を参考にしていることを、「ユニー クな採用方針」のように好意的に紹介されていたのを読んだ。
これが「黒人は…」 「朝鮮人は…」「女は…」だったら、 はたして「ユニークな採用方針」と紹介されるだろうか? 件のおじさんは、 自分が AB 型で就職差別を受ける身となることを想像できなかったのだろうか? 新聞記者は、たとえ就職できたとしても人事担当者からある血液型であるとい うだけで永遠に色眼鏡で見られるという事実を想像できなかったのだろうか? このように、差別は貧困な想像力から発生するのである。朝鮮人差別が当然の 時期、黒人差別が当然の時期には、同じようにその体系を多くの人々が当然の ことと受け入れていたに違いない。
血液型の最大の問題は、最少数派である AB 型が、「協調性がない」などとい う否定的評価をなされているという事実にある。ここには、「不利益を受ける人間がマイノリティであり」、かつ 「努力しても変えようのないものが判別基準とされてい る」という、悪質な差別体系に付き物の特徴が存在している。
もっとも、個人的には血液型による性格の差があるかどうかは、「わからない」 と思っている。私は、差別に関する反対意見というものは、いつぞやのフェミ ニズムのように「X と Y は同質である」ということを根拠なしに主張してそ の根拠としてはならないと思う。これを根拠とすると、「違う」ということが 科学的に証明された場合に、その主張の根拠が失われる上に、そもそも権利獲得のために同質性を強引に求める行為自体が、「異質」 の排除につながる、という点で差別的なのである。やれやれ。

『世紀末宗教戦争マップ』
ボスニアをネタにした映画を観たのでちょっと読みたくなった。半分くらい読 んだが、まったく困ったもんだ。私は宗教を積極的に否定するものではないが、 こういうものを読むと否定したくもなってくる。宗教が「上からの抑圧」や 「神への責任転嫁」の体系と化したときにこういう悲劇が起こるのだろうが、 もしかするとそれは宗教が本質的に持っているものではないかという気もして くる。トホホ。

『ループ』
これは今日買ったものではないが、今日読み終わったので一緒にいれておこう。
実は私は鈴木光司の作品で一番好きなのはデビュー作の『楽園』(これは本当 にいい作品だと思う)なのだが、今度映画化もされたらしい『リング』や『ら せん』も前に読んだことがある (そういえば、V シネマ版『リング』を覚えて いる人はいるかな?)。
私は『リング』は結構気に入ったのだが、『らせん』はあの『パラサイト・イ ヴ』(瀬名秀明) の悪影響を受けてしまったようで、今一つ『リング』との世 界の整合性や純粋な恐怖小説という意味でトーンダウンしてしまったような気 がしていた。しかし、今回のこの作品で一応、「一つの世界としてまとまった」 と言えるだろう (だいぶ強引なのだが、読んでのお楽しみ)。結構楽しめた。
「情報量はどーなるね!?」とツッコミを入れて みたのだが、ちゃんとホログラフィックメモリ なんて逃げを打ってあるのね。『パワーオフ』(井上夢人)、『BRAIN VALLEY』 (瀬名秀明) に続く、最近流行りの Artificial Life ネタ小説だね。でも私と しては『BRAIN VALLEY』が好みだな。


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ほそかわ たつみ < hosokawa@ntc.keio.ac.jp >