聖域・末吉宮

銀塩写真はニコンF3+ニッコール 35mm F2.0, フィッシュアイニッコール 16mm F2.8。 フィルムはフジ・ネオパン400プレスト。

那覇市・首里末吉にある手つかずの自然が残された山の奥にある聖域、末吉宮。15世紀から「琉球八社」のうちの一社として特別な神社であった場所であり、熊野権現を祀っている。前回行った時にコンパクトデジカメで撮った写真は、あまりに平板に見えて、この聖域に申し訳ない思いがあり、公開できなかった。今回はNikon F3に白黒フィルム(ネオパン400プレスト)で撮ってみたが、やっとあの空気の一部を表現できたような気がする。

アクセスはゆいレールの市立病院前駅から徒歩数分で、末吉公園に着く。末吉公園の中は安謝川が流れている。川を渡った彼岸にその聖域はある。

橋の先の石段を上り切ると、その最上部の中央にいきなり木が一本立っている。これも何かのシンボリズムなのかも知れない。この「神社」の鳥居のようにも思える(末吉宮には鳥居はない)。

そこから横に道が走っている。沖縄らしい石灰岩の石畳。風が通り過ぎると、周りの木々がざわざわとざわめく、そんなただの自然現象がこの地のざわめきのように感じられる不思議な場所だ。

道は途中で分岐し、山を登る石畳の道「末吉宮磴道」となる。

雨上がりで滑りやすい石畳を慎重に登っていく。

その先に、沖縄のグスクの壁のような石造りのアーチが見えてくる。このアーチが末吉宮の社殿に至る階段である。

見上げると末吉宮の社殿が見える。清水寺のような舞台構造を持った不思議な建造物である。スケールは違うが、伝説にある古代の出雲大社の姿なども連想される。

この道の左右にもさまざまな拝所のような空間がある。

このアーチの上の方に登ると、末吉宮の社殿がある。実際にはこの奥にさらに本殿があるが、表からはほとんど見えない。神主さんがいらっしゃったので挨拶をした。

このアーチをくぐった先、前の写真でいう石段の右側はものすごい迫力を持った御嶽になっている。

斎場御嶽に行った時も凄いと思ったが、ここではさらに恐ろしいものを感じる。御嶽と言う存在は、人間が共通で持つ「聖域」のアーキタイプであると思う。ここはまさに純粋な「神聖なるもの」を感じさせてくれる場所だと思う。

さらに奥に通じる階段がある。この先には踏み込んではいけないように感じたので、この先には行かなかった。それにしてもものすごい、神々しさを感じさせるガジュマルの樹である。

石段から振り返ると、首里の町並みが見える。この神社は、琉球八社の中でも特に特別な神社であったらしい。それは分かるような気がする。

そろそろ戻ることとする。

濡れた石灰岩の石段、というより石畳の斜面を、カメラ機材等を持ちながら下りるのはなかなか難しい。なんとか無事に石段を下りることが出来た。末吉宮磴道を下りきったところで振り返ると山の斜面に末吉宮が見える。ここからだと奥にある本殿もよく見える。

先ほど行きに使った末吉公園からのルートとは別に、「高平山(タカデーラヤマ)」と言われるらしい別のルートがゆいレール儀保駅方面に通じている。

こちらの方が末吉公園からの方よりも手つかずの原生林の中を狭い道が抜けていく、恐ろしいルートである。原生林を抜けると墓地に入る。

墓地を抜け、坂を下るとそこは日常空間である。首里の街の真ん中にこんな聖なる場所がそのまま存在ているということは凄いことだと思う。

…ここからゆいレールの儀保駅までは徒歩数分だ。